農村女性のエンパワーメントのための国際会議で見えたこと

合同メソジスト教会の女性部門 (United Methodist Women, UMW)はニューヨークの国連本部の真向かいに Church Center for the United Nation という12階建てのビルを構えている。このビルは約50年前に「平和、人権、開発、生態系の問題の改善に取り組む国際外交に対してキリスト教会の支援を示す」ことを目的に、メソジスト教会だけでなくエキュメニカルの運動の拠点となるべく、教会女性を中心とした設立運動の末建てられた。約半世紀、米国内外の教会女性や市民運動に関わる人々を対象にしたセミナーや研修の開催はもちろんのこと、国連の専門組織や各国政府代表とも強いパイプを築いてきた。

UMWは国連で毎年開かれている Commission for the Status of Women(CSW:女性の地位向上委員会)の総会に合わせて、CSWが毎年掲げるテーマに関連する活動を行う民間団体を世界各国から招き、 Church Center を主会場に数多くの「並行」セッションを企画・開催している。今年のCSWのテーマは「農村女性のエンパワーメントと、貧困・飢餓撲滅、開発と近年の諸問題における農村女性の役割」で、UMWはこのテーマに関係する9人の女性を自分らの代表団として直接招待し、その中にアジア学院関係者3人を入れて下さった。私はアジア学院を代表して参加し、私の他にザンビアからジュディス・ダカ(01年卒)とミャンマーのノウ・リー・ミャー(98年卒、07TA、09年職員)が招待された。他の6人はフィリピン(2)、シエラレオネ(1)、ブラジル(1)、セントビンセント・グラナディーン(1)、コソボ(1)で、それぞれ農村女性を対象とした活動を行う活動家であった。

私たち9人の代表団はUMWのスタッフと共にUMWの主催する小セッションに参加し、時には発表者として自分らの活動を紹介する機会を与えられた。あとの時間は他の団体が主権する無数のイベントやセッションに自由に参加することができた。国連本部で行われていたCSW56回定期総会を聴講する機会もあったが、2階のギャラリーから各国代表の形式的なやりとりを見るだけで面白いものではなかった。一方民間団体が主催する「非公式」イベントは活気に溢れ、どのセッションも非常に盛況で、市民運動に関わる女性の真剣さ、情熱、ネットワーキングに対する積極性に圧倒された。扱われたテーマは人権、平和、貧困削減、食糧保障、環境保全、母子保健、職業訓練、小規模金融、政策提言と多岐に亘り、実例が多く参考になった。

貧困問題の解決には農村家庭における食糧保障を優先し、
複合的な有機農業が非常に効果的である

今回参加し気づいたことが3つある。ひとつは紹介された農村女性の問題解決法には、農業の視点が欠けていたことである。アジア学院は貧困問題の解決には農村家庭における食糧保障を優先し、自給を念頭に小さくも複合的に農業を行うことが有効であると考えている。そしてそのためには経済的、環境的な観点からも、高額で環境への負荷が大きい化学肥料や農薬に頼らない、地域資源の有効利用を最大限に追求する有機農業が非常に効果的であると推奨している。さらにそうした農業活動の中での女性の役割は、労働力という点だけでなく、環境保全や食糧保存の知恵、また食糧の分配においてなど大変重要であるにも関わらず、その点もあまり強調されなかった。未だに農業分野の貧困削減対策の主流は、農薬や化学肥料を含む農業資材の供与で、その方法では農民の依存心が助長され、自力で問題を解決することにつながらないという事実に反省がないようであった。卒業生のジュディスとミャーは、アジア学院の研修で、無償または安価な資源が身の回りにたくさんあって、自分の農業活動の中に創意工夫と発想の転換で改善できることがあることに気づいたと話した。そしてそれらを実践することで経費削減と収入増に結びつき地域開発に貢献したと発表すると、聴衆は大いに納得した。私はアジア学院の進める農村生活改善の方向性が、世界各地の農村で必要とされていることを強く確信した。

アジア学院の奨める農村生活改善の方向性は、
世界各地の農村で必要とされている

2つめは参加者の間に、自分の毎日の食生活のあり方が世界の農村の実情に影響を与えているという視点が皆無といっていいほどなかったことだ。農村の女性の問題を扱うプロたちにこの視点がないことは憂慮すべきことだと感じた。この点はアジア学院から今後強く発信していかねばならないだろう。

3つめの学びは、世界的に移民の問題が非常に大きな問題となっていることである。移民と一口に言っても、戦争や治安悪化、環境破壊、経済的機会の追求と理由は様々である。そして今や世界中いたるところに大量の移民が存在し、その問題は広範囲で複雑さを極めていた。今後この問題はアジア学院の研修に組み込んでいくべきだと感じた。

(副校長 荒川朋子)