学び舎の創設 > 共生のトレーニング

 

すでに20数年前、南アフリカ共和国を訪れたときは緊張の連続であった。現大統領のネルソン=マンデラ氏は獄中にあり、市中で彼の名前を言うのもはばかる様な雰囲気であった。

アパルトヘイト(人種隔離政策)の即時撤廃を叫ぶ声が地球規模で高まる中で、当時の南ア政府の態度はますます頑なになる様相であった。

日本人は「名誉白人として扱われる」という様な不名誉は受けたくないので、半月ほどの滞在期間中はブラック・コミュニティ(黒人地区)にお世話になり、それは白人地区には足を踏み入れないことであった。

ケープタウン郊外の海水浴場では砂浜に真っ赤な立て札があり、黒い字で「黒人立ち入り禁止」とあった。そこから少し歩くと白い立て札があり、黒い字で「黒人用海水浴場」とあった。あの洋々たる海の水をどうやって白人用と黒人用とに隔離するつもりだろうかね、と言って同行の人たちと大笑いをしたものだ。

その南アフリカから、この秋アジア学院へ5人の農業専門家が短期研修にやってきた。いずれも地方公務員で、農業改良普及員、農業学校教師、農業試験場の研究員等である。来日の目的は野菜栽培の研修である。

しかし、彼らが帰国後に一般農民相手の野菜栽培を中心とする普及活動には、見逃す事のできないリーダー研修にかかわる事柄があるので、その事について話し合った。

長年にわたる抑圧的な人種隔離政策のもとにあって、黒人たちはその生活の全てを、圧倒的な抑圧の力をしのぎ、いつの日かその体制を覆すための努力に傾けてきた。それが、マンデラ大統領のもとに新生の気運をつかんだ南アの人々は、一夜にしてその生活態度を闘争から和解へ、隔離から共生へ、破壊から建設へと転換せねばならないのである。

数世代にわたり執ってきた剣を鋤に持ちかえるのは至難のわざである。それが野菜栽培であれ養鶏であれ、破壊活動からいのちをいとおしみ、はぐくみ、自然と共におおらかに生きる社会をつくることに繋がっていかねばならない。

南アだけではない、アフリカ各地に、中近東その他に、ますます「敵」を倒し、難民からさえも食料を奪い、自然を破壊する働き、「教育」がなされている時、いのちと食べものを大切にする世界をつくるアジア学院の教育研修の重要性は大きくなる一方である。学院の現リーダーシップ、職員がたの活躍に期待するものである。

 

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