学び舎の創設 > 凝縮 - 3

 

アジア学院の最も好ましい点は何か。

わたしは、この25年間このことを、研修に参加する学生、職員、講師、ボランティア、来訪者などに人々に問うてきた。一見地味な働きをしている小さな学び舎に、多くの人々が出入りし、世界各地からますます増える勢いである。なにが大勢を惹きつけるのか。

「国際的だ」、「豊かな自然に囲まれている」、「空気と水がおいしい」、「ここにいると何となくホッとする」、「みんなの笑顔が美しい」などなどが咄嗟に出てくる答えである。そのような場所であることを感謝したい。

しかし、そのような場所は他に沢山あるに違いないし、現にいくつかを知っている。

長年にわたって問い続けたことの答えは一言でいうと「シンプル・ライフ」である。日本語に訳するとニュアンスが失われるので、ここでは「シンプル・ライフ」のままにしておこう。世界各地からの学生たちは異口同音にARIの最も好ましい点はシンプル・ライフだという。そしてかれらがおしなべて尊敬する、あのマハトマ・ガンジーの最も好ましい点もやはりシンプル・ライフだというのである。

では、シンプル・ライフとは何かと問うと答えは咄嗟には返ってこない。そこで、かれらの答えをわたしなりに掘り下げてみた。結局それは次のようになる。

人間関係をシンプルに生きる、そして自然との関係もシンプルに生きることが根源であるらしい。ARIではお互いに自由で対等な人間として共に生きる努力をしている。上下関係や肩書き、老若男女、民族や宗教、信条などによる差別をしない。しばらく学院で暮らすとその様な区別で互いを見る意識がうすらいでくる。また、自然を支配するのではなく、いのちを分かち合う者として自然と共に謙虚に生きるのである。

ガンジーは決してシンプルな人生を送ったわけではない。英国で教育を受け弁護士となり、南アフリカで人権運動を始め、インド独立の闘志として投獄されること数十回。彼の政治、経済、文化、宗教等の思想は深く多岐にわたっていた。しかし、彼の人間に対する姿勢は常にシンプルであった。植民勢力の最高権力者や官憲、つきまとう報道関係者、地主や農民などすべてに対等に接し、自然に対して謙虚であった。そしてつねに根源的な問いかけをつづけた。

アジア学院のシンプル・ライフは一朝一夕にできたものではない。数千年にわたる、すべてのものが自由で平等に「共に生きる」世界の実現をねがって努力を重ねてきた知恵の蓄積、凝縮の上になりたっているのである。

現代の風潮の中では、シンプル・ライフなどは、その心を失えば瞬時に消え去るものである。シンプル・ライフの根源は神の愛である。人々がアジア学院で「何となくホッとするのは」そのせいではなかろうか。

 

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